本記事では、「転職してまで弁護士を目指すべきか」ということについて解説します。
○本記事が想定する読者
弁護士への転職を検討中の方。
○結論
弁護士は、特にやりたいことがあるならやりがいのある仕事といえるが、収入面でプラスになるかは微妙で、司法試験に合格できないリスクも考慮しておく必要がある。
以下、解説します。
転職を果たした弁護士
いったん就職した会社を辞めてロースクールに入学し、司法試験に合格して弁護士になる人が一定数います。
これは余談ですが、2004年に開設された法科大学院(ロースクール)は、様々なバックグラウンドをもった人が弁護士を目指しやすいように制度設計されたはずでしたが、蓋を開けてみると、そのような転職組は思ったより少なく、その後もあまり増えていないという状況です。
わざわざ法学既修者コース(2年)のほかに、法学未習者コース(3年)を作ったのですが、未習者コースにも法学部出身者が多いという状況となりました。
ともあれ、実際に前職を辞めて弁護士になった人はいます。
理由は様々ですが、具体的にこれがやりたい、というよりは、新しいことにチャレンジしたかったというような動機が多いように観察されます。
前職のスキルが活かせる
前職を売りにしている弁護士としては、前職が医師で医療過誤(患者側か病院側のいずれか)を専門としている人、金融機関出身で金融法務(金融機関の顧問等)を専門としている人などがいます。
ただ、常に前職の経験が売りとして活かせるかといえば、そうとはいえないと思います。
例えば一般企業に新卒採用されて2~3年在席していたという程度では、あまり弁護士業に活かせることはないと考えられます(無駄だという意味ではなく、上記のような「売り」になるかどうかの視点です)。
収入面
弁護士の収入については、別の記事(弁護士の年収について)で解説しました。
費用対効果という意味で、常に大きなリターンが期待できるとは言い難いですので、当然に報われると思っていたとしたら、それは誤解です。
やりがい
弁護士には、弁護士にしかできないことがたくさんあります。
基本的には法律事務は弁護士しか行うことができず、民事訴訟、刑事裁判の専門家は弁護士だけです(※認定司法書士には簡裁代理権があります)。
一個人であっても、裁判を戦うことで、世の中の仕組みや法律そのものが変わることがあります。
そのような社会的影響力のある仕事がしたいという方には、非常にやりがいを感じられると思います。
私個人としては、社会的に目立ったことをしたいという欲求は全くありませんが、依頼者は「困っている状態」であることが多く、事件を解決したときには「感謝」してもらえることがあります。
仕事をして、顧客から直接感謝の言葉がもらえる仕事は、もしかしたら少ないかもしれません。こういうときにやりがいを感じますね。
司法試験に合格できないリスク
仕事を辞めロースクールを卒業したとしても、司法試験に合格できるとは限りません(※狭き門ですが、予備試験というルートもあります)。
ロースクール卒業後、司法試験は最大5回受けることができますが、5回受けても合格できない人は確実に存在します。
また、現実問題として、ロースクール卒業後に5年間も受験を続けるのは経済的にも非常に苦しいと思います。
司法試験に合格できなかった法科大学院出身者は、民間企業に就職したり、公務員試験を受験したりする人が多いようです。
最近は、裁判所職員(事務官・書記官)になる人が増えているようです。
このように、司法試験に合格できなかった場合のことも考えておく必要があります。
最後に
法科大学院が年々不人気になっているので、現在は、司法試験合格までの最短期間を短縮する「法曹コース」というものが設置されています。
これは、若い優秀な学生を法曹に誘引する政策といえます。
法科大学院制度が始まってから、法曹養成はかなり混迷を極めている状態ですが、ロースクールに通う余裕がない人にとっては徐々に不利になっている側面もありますので、社会人にとっては逆風になっているともいえます。
そこまでの苦労と難関を潜り抜けても、約束された経済的リターンがあるとはいえません。
しかし、弁護士になっても仕事が全くないという状態にはなっていませんので、弁護士になってやりたいことがあるという方にとっては、自由でやりがいのある仕事に就くことのできるチャンスかもしれません。