今回は、弁護士に依頼しないほうが良い場合について解説してみたいと思います。
もちろん、どのような判断をするかはケースバイケースですが、できるだけ抽象化してお話しします。
前提として、弁護士に「相談」しないほうが良い場合というのは基本的にはないので、「相談」を受けた上で、あえて受任はせず、影からアドバイスするに留めたほうが良い場合という意味ですのでご注意下さい。
〇弁護士に依頼しないほうが良い4つの場合
・本人が窓口に立ったほうが交渉を有利に進められることが見込まれる場合
例えば、交通事故の被害者の方の相談を受けた場合を考えてみます。
仮に、相手方の任意保険担当者が賠償対応を続けているような場合は、被害者保護の観点から、保険会社は法律素人の被害者に対し過度な立証等を求めない場合もあり、弁護士が介入するとかえって立証のハードルが上がってしまうことがあります。
このような場合、しばらく様子を見て、賠償対応が打ち切られたタイミングで介入するということがあります。
・弁護士が付くことにより、相手方が感情的になり、かえって交渉が難航することが予想される場合
具体的にいえば、離婚の有責配偶者側や、借金滞納中の借主など、相手方より立場が弱く、あまり強気に出られない場合などが想定されます。
相手方からすると、「お前が悪いのに弁護士を付けるとは何事か!」となり、勝ち負けではなく話し合いで解決すべき事柄なのに、全く話し合いにならないということが起こり得ます。
このような場合、平身低頭しながらの話の持っていき方も含めて、影からの指導に留めることがあります。
・弁護士が付くことにより、相手方が警戒しガードを固められてしまう場合
相談者側が請求権者・被害者側だが、現時点では請求のための証拠が十分に集まっておらず、相手方に非を認めさせたり、任意に証拠を出させたりしなければならない場合、弁護士が付くと相手方も弁護士に相談してしまい、ガードの方法を教えられてしまうことがあります。
このような場合は、相手方をうまく誘導する方法をアドバイスし、まずは依頼者本人において請求のための証拠固めをするよう促すことになります。
・弁護士が付くことにより、交渉が決裂することが予想される場合
そもそも交渉に応じない相手方というものがあります。
しかも、交渉に応じないだけでなく、弁護士受任時点で依頼者に不利益が生じてしまうような場合があります。
具体例を挙げるのが難しいのですが、例えば、金融機関の対応に納得がいかない企業の相談、継続的取引関係にある大口取引先(発注側)から不当な扱いを受けている受注企業の相談などです。
もちろん対抗のための様々な法律構成は検討しますが、最終的にはリスク(信用情報棄損、取引停止)を踏まえて、影からのアドバイスに留めることも多いです。
〇小括
せっかく弁護士に相談したのに、受任して解決してくれないの?と思われるかもしれませんが、大切なのは事案の解決であり、弁護士が受任するかどうかではありません。
受任することを優先するあまり、かえって依頼者の不利益になるようでは本末転倒です。
弁護士のテクニックとして、受任せずに影からアドバイスを続けるパターンもあるということをご理解いただければと思います。