弁護士を選ぶ

複数事務所に依頼するメリット・デメリット

 本記事では、依頼者目線から見た複数の弁護士が所属する法律事務所に依頼するメリット・デメリットについて解説したいと思います(裏を返せば、一人事務所に依頼するメリット・デメリットです)。

(メリット)その分野の専門家にあたる可能性が高い

 その法律事務所の所属弁護士が多ければ、その専門分野も多少はバラけています。

 したがって、離婚分野はA弁護士、相続分野はB弁護士など、専門分野によって担当を振り分けている事務所もあります。

 一人事務所ですと、その弁護士の力量が全てですが、複数事務所だと、このように多様な専門分野のメニューが用意されている点がメリットの一つです。

(メリット)担当弁護士に何らかの故障があっても他の弁護士が代替してくれる

 依頼している弁護士が病気になるなど、事件処理を遂行できなくなることがあります。

 一人事務所だと、別の法律事務所に一から依頼する必要がありますが、複数事務所だと、通常、複数の弁護士との委任契約を締結することになるので、引き続き、その事務所の別の弁護士が担当してくれます。

(メリット)チームで取り組んでもらえる(ことがある)

 一人事務所ですと、調べものや書類作成などを全て一人でこなす必要がありますが、複数事務所だと、ある事柄について他の弁護士の知恵を拝借したり、作業を分担してもらったりすることが可能です。

 弁護士の能力は経験に依存しますが、一人で経験できることには限りがありますので、弁護士の数が多いほど、法律事務所に蓄積される経験値は大きくなります。

(デメリット)ボス弁に依頼したつもりがイソ弁担当になっている

 複数事務所の場合、ボス弁、イソ弁という分類があることが多いです(イソ弁の意味についてはこの記事を参照)。

 そして、依頼者はボス弁を頼って相談に来るのですが、実際に事件処理をするのはイソ弁ということがよくあります。

 もちろん、イソ弁が新人の場合はボス弁も任せっきりにすることはあまりないと思いますが、依頼者からすると、頼りない新人だと不安に感じることがあると思います。

(デメリット)利害相反の可能性が高くなる

 弁護士には利害相反という概念があり、例えば、Aさんからの依頼を受けているときに、Aさんを相手方とするBさんからの依頼を受けることはできません。

 ある件ではAさんの味方なのに、別件ではAさんの敵になり得るというのでは、弁護士という職業の信頼を保てないからです。

 この利害相反は、弁護士個人ではなく、法律事務所単位でみるのが普通です。

 なぜなら、法律事務所の中では担当案件などの情報は筒抜けであることが多いからです(巨大事務所では事務所内にファイアウォールを敷いてこの問題を回避しようとしているところもあります)。

 つまり、X弁護士の依頼者Aさんを相手方とする事件は、X弁護士と同じ事務所に所属するY弁護士も受任することはできないということです。

 弁護士数が多ければ多いほど依頼者の数は多くなるので、バッティングの可能性は高まります。

 せっかく相談したが、利害相反チェックの結果、受任できないことが判明したので、別の法律事務所に行かなければならなくなった、ということが起こり得るということです。

最後に

 上記の点は、あくまで相対的な問題で、複数事務所が良いのか、一人事務所が良いのかはもちろん一概にはいえません。

 一般的には複数事務所のほうが安心と思っている人が多いような気がしますが、複数事務所だからレベルが高いとか、そういうことは基本的にはありませんので、あくまでその弁護士とのマッチングを重視していただければと思います。