弁護士は、自分自身が法的紛争に巻き込まれたとき、どうするのでしょうか?
交渉にせよ裁判にせよ、弁護士を立てなければならないという決まりはなく、自分自身で遂行していくことはもちろん可能です。
実際、離婚調停などの家事事件を始め、知人間の貸金返還請求の裁判なども、法律素人の一般の方が自分自身の事件を進めている姿を、裁判所でよく目にします。
ですから、法律専門家である弁護士なら、当然、自分自身で進めることは可能ですし、実際にそうしている弁護士もいると思います。
ただ、私の知る限りでは、弁護士は、自分自身の法的紛争について、他の弁護士に依頼することがよくあると観察されます。
それはなぜでしょうか。
なぜ、法的知識があるのに、わざわざ弁護士費用を払ってまで、他の弁護士に依頼するのでしょうか。
理由その1 自分がやるよりも良い結果が得られる可能性がある
自分自身が巻き込まれた法的紛争について、その弁護士に専門性があるとは限りません。
そのことはその弁護士自身が良く知っています。
ですので、お金を払ってでもその分野の専門家に依頼することは合理的ということになります。
理由その2 仕事が忙しいので外注
自分自身の法的紛争を解決したとしても、弁護士報酬が発生するわけではありません。
それよりも仕事に集中したほうが、トータルとしてプラスという考え方もあります。
理由その3 自分自身で自分の「弁護」をすることに気が引ける
法的紛争の中で行われる主張は一般に、一方の立場を擁護しつつ、他方の立場を攻撃するという構造をとります。
それを自分自身のために行うとなると、まさに「自己弁護」となり、面映ゆい気持ちになること請け合いです。
理由その4 主張の信用性の問題
弁護士が代理人として就くメリットとしては、法律実務をよく知っているということに加え、依頼者の主張が当事者ではない第三者かつ専門家である弁護士のフィルターを通して行われていること自体に一定の信用性が付与される点にあります。
この信用性付与は、弁護士が自分自身のことについて主張しても生じないと考えられます。
〇小括
今回は、弁護士もまた弁護士に依頼するということがあるということを解説しました。
少し話は逸れますが、弁護士が依頼する弁護士は、弁護士が任せるに値すると考えた弁護士なので、能力的にも高いということが推定されるかもしれませんね。