弁護士業界こぼれ話

弁護士の横の繋がりについて

 弁護士に横の繋がりはどの程度あるのでしょうか。

 本記事では、弁護士同士の関係性について解説します。

大学・法科大学院で同期

 受験時代からの友人は、苦しい受験時代を一緒に過ごしていたこともあって、弁護士になるタイミングはまちまちでも、そのまま友人関係が続くことが多いと思います。

司法修習が同期

 司法試験に合格すると、司法修習という1年間の研修期間があり、各都道府県にランダムに配属されます。

 このときに一緒のグループになったいわゆる修習同期とは一生の付き合いになります。

 苦しい司法試験から抜け出せた解放感、実務修習という新規の経験、これから社会に出るという緊張感などがないまぜになり、弁護士(裁判官・検察官)にとっては最後の青春時代となる瞬間なので、自然と絆は深まります。

 弁護士になった後も、定期的に集まって会食をしたりします。

弁護士登録地の同期

 司法修習を修了すると、弁護士志望者は、就職を希望する各単位弁護士会に登録を申請することになります。

 司法修習地は東京でも登録するのは北海道というように、修習地と就職地は必ずしも一致しません。

 そうすると、司法修習のときには顔を合せなかった同期と、今度は就職する単位会で知り合うことになります。

 近年では、すぐに誰かがMLやライングループ等を作るので、同期同士で情報交換をしたり、飲み会を開いたりして、交流を深めていきます。

弁護士会の委員会が同じ

 弁護士は所属する単位弁護士会において、委員会活動をする必要があります。

 委員会についてはまた別の記事で紹介しますが、刑事委員会、法律相談センター運営委員会など、弁護士会の様々な社会活動を取り仕切る担当部署という位置付けです。

 本来であれば、弁護士または弁護士会の社会的責務を果たすため、各弁護士が等しくその一端を担うべき活動ですが、委員会に積極的に参加する弁護士と全く参加しない弁護士が二極化しており、それが大きな問題となっています。

 さて、このように、委員会活動は弁護士業務とは離れて、弁護士会内部のガバナンス、対外的広報、ボランティア活動(プロボノ)など多様なものを含んでおり、個人の利害関係を捨象して人間関係を構築することができます。

 また、一度委員会に所属すると、何年もほぼ同じメンバーで活動することも多いです。

 したがって、同じ委員会に所属しているということによって、弁護士同士の深い繋がりが構築できることがあります。

弁護団のメンバー

 社会的な影響が大きいが解決が困難な事件などは、一人の弁護士の手に負えない場合があり、複数の弁護士が参加する弁護団が結成されることがあります。

 この弁護団というのは、被害者の救済という意味で明確な目的が設定されています。

 また、弁護士は普段は一人で考えながら仕事をすることが多いのですが、弁護団だと全員と相談しながら進めることになりますので、孤独を感じることがありません。

 したがって、弁護団で事件解決をしたという経験は深い絆となってその後も確実に残ります。

事件の当事者の代理人

 例えば、同一の刑事事件に複数の被告人が起訴されることがありますが、このときの弁護人は別々の弁護士が就きます。

 また、相続事件では、例え基本的に利害が一致していても、原則として各相続人につき別の弁護士が就くことになります。

 このようなケースでは、足の引っ張り合いになることもなくはないですが、利害が共通する範囲で協力すべき点がある場合などは、部分的に一種の弁護団のようなかたちになることがあり、信頼関係が生まれることがあります。

事件の相手方代理人

 弁護士は、依頼人のために一生懸命活動するので、相手方代理人に対しても、きつい物言いをしたり、刺すような文章を書かなければならないことがあります。

 その意味で、事件の相手方代理人とその事件がきっかけで「仲良くなる」ということはまずありません。

 もっとも、事件の相手方をすると、その代理人の性質が良く分かることがあります。

 難しい事件で依頼者とうまくコミュニケーションが取れている人や、こちらが思いつかなかった柔軟な提案をしてくれる人など、結果的に、「一目置く」状態になることもごくたまにあります。

 そのような優秀な弁護士については、別の事件であたったときでも、プロとしての信頼関係があるため、安心して交渉に入ることができます。

事務所同士が近所

 事務所同士が物理的に近いと、自然と親しくなることがあります。

仲の良い弁護士が相手方だとやりにくいか

 この質問も、良く受けることがありますので説明しておきます。

 弁護士同士は全て横で繋がっており談合しているのではないか、と大真面目に依頼者から言われたこともあります(そのような弁護士不信を招いたのは、前任の弁護士の責任なのですが)。

 結論からいえば、仮に親しい弁護士が相手方代理人であったとしても、やりにくさは感じません。

 むしろ、信頼に値する弁護士であれば、プロとして噛み合った交渉ができる期待値が上がります。

 また、当然ですが、わざと手を抜くということもありません。

 弁護士倫理の要請という以外にあえて理由を挙げるとすれば、

  • 手を抜くなどということは弁護士としてのプライドが許さないから
  • 親しいからといって手を抜くと周囲から見くびられて仕事に支障が出るから
  • その弁護士よりも依頼者と自分のほうが大切だから

というようなことを一応挙げることはできますが、蛇足ですね。

最後に

 どんな業界でも横の繋がりというものがあると思いますが、弁護士業界は、横の繋がりが比較的濃い業界であると思います。

 私は所属していないので本文には書きませんでしたが、どんな単位会にもサッカー部や野球部があり、その他部活動も盛んです。

 また、会派(悪く言うと派閥)というものも存在します(説明すると特定情報になってしまう可能性があるためあえて割愛しました)。

 いずれにしても、弁護士として横の繋がりを構築しておくことは、業務的にもプラスになることが多いのではないかと思います。