本記事では、弁護士目線から、こんな依頼者だと困るな、と思う類型を紹介したいと思います。
もちろん、どんな依頼者であっても信頼関係を築いて事件解決に導くのがプロですが、あくまでエンタメとしてお読みいただければと思います。
連絡が取れない依頼者
相談を聞いて受任したは良いが、報告や方針確認をしようにもなかなか連絡が取れない人がいます。
固定電話しか持っていない、という通信手段の問題ではありません。
むしろ、固定電話しか持っていない人は、かなりの確率で電話に出てくれます。
スマホも持っている、電子メールもできるのに、電話の折り返しもしない、メールにも返信しない、という人がいるという意味です。
これは、事件処理方針のうち、打合せのときにはその可能性の説明を聞いてはいたが、実際に事件処理がそのように進むとやはり納得ができず、かといって弁護士に方針転換も言いにくいので、現実逃避で連絡をしないというパターンが多いように思います。
最初の段階で依頼者に十分に説明していないのではないかと思われたかもしれませんが、こういう人に対しては普段の何倍も時間をかけて説明しています。
それでもどうしてもこうなってしまう、ということなのです。
逆に言うと、このような依頼者にとっては、それも決断のために必要な時間だということになるかもしれませんが、依頼を受けている弁護士は相手方との窓口に立っていますので、2~3か月も事件が動かないと流石に困るわけです。
どうしても必要な場合は、「これ以上連絡が取れないと辞任せざるを得ませんよ」という連絡をすることになりますが、経験上、これで大体は連絡をしてきてくれます。
話を聞いてくれない依頼者
例えば初回相談は、依頼者との信頼関係構築のために非常に重要な時間になりますので、依頼者が弁護士に伝えたいと思っていることは可能な限り聞くべきです。
それが一見、事件処理に無関係な事柄であっても、
- 事件解決のヒントになることがある
- 話を聞いてくれたという信頼関係に繋がる
- 不満を話すことによりスッキリして事件解決のハードルが下がる
という効用があるのです。
しかし、5回10回と打合せを重ねなければならない事件で、冒頭から30分以上毎回同じ話を繰り返されると、流石に「それはもう分かっています」と言いたくなります。
このような依頼者は、大抵、人の話を聞くというスキルが低く、通常の何倍も時間をかけて説明をしないといけないので、「長時間話を聞く」→「そのわずかな合間を縫って繰り返し何度も同じ説明をする」というループに陥りがちです。
私は、そのような方の場合は、交互にしゃべると際限がなくなるので、最初の20分くらいは黙って話を聞いて口を挟まず、その後「〇時から次の打合せがあるので残りの時間は私がしゃべりますね」というかたちでメリハリをつけるようにしています。
弁護士は指示どおりに動くべきと思っている依頼者
お金をかけて依頼している以上、依頼者の方は、弁護士には自分の利益になるように動いて欲しいと思うのが当然です。
しかし、ときに、その「依頼者の利益」をめぐって、依頼者と弁護士の意見が一致しない場合があります。
例えば、金額の多寡を重視すべきか、時間を重視すべきかという定量的な問題であれば、基本的にはその判断は依頼者に任せて構わないと思います。
しかし、勝てる見込みがない事件を、弁護士費用をかけてまで依頼すべきかという点については、依頼者が強く望んでも、弁護士としては基本的にはネガティブに捉えるべきと考えられます。
もちろん、見込みが「薄い」事件だからといって断る必要はありませんし、むしろ、その薄い見込みをいかに上げていくのかが弁護士の力量です。
ここで言っているのは勝てる見込みが「ない」と判断される事件であったり、まったく事件解決の目途が立たないような案件のことを指しています。
たまに、極めて甘い見通しから、どうしようもない事件を受任してにっちもさっちもいかなくなっている弁護士を見ることがあります。
もちろん事件は解決しないので、依頼者にもデメリットしかなく、弁護士自身もいつまでも解決できない事件を抱え続けなければなりません(着手金も返金しないといけないかもしれません)。誰も幸せにならないわけです。
さて、前置きが長くなりましたが、このように、弁護士は、(違法なことは当然として、例え合法であっても)依頼者がやって欲しいといったことを全て実行するわけではありません。
弁護士は、客観的に、誰も幸せにならない、社会課題の解決にもならない、何の心の整理にもならないような、弁護士だけが空回りするような事件受任をするべきでありません。
その意味で、弁護士は依頼者の利益を自分独自の目線で見ていますので、仮にそれに反するような方針を示されたら反対しますし、場合によっては辞任することになると思います。
最後に
偉そうに自分のことを棚に上げて依頼者のことを書いてしまいましたが、繰り返しますがエンタメとしてお読みください。
振り返ってみると、依頼者とうまくいかないのは、どこかでボタンの掛け違いがあることが多いです。
経験を積んでくると、そのような地雷が見えてくるようになるので、うまく回り込みながら進むことができるようになります(と主観的には思っています)。