本記事では、「電子契約」について解説します。
電子契約とは
電子契約とは、紙の契約書ではなく、インターネット等を通じた情報交換により契約を締結させる契約形態を指します。
新型コロナウィルスの終息が見えない中、対面せずに契約締結が可能である電子契約サービスを利用する企業が増えているようです。
電子契約の流れ
そもそも、契約は口頭でも成立するように、紙の書類で契約書を作成しなければ契約が成立しないというものではありません。
しかし、契約が成立した事実、契約内容及び契約成立時点が曖昧だと、後日の紛争に繋がるため、客観的な契約書を作成するのが、特に企業活動では通常です。
電子契約では、サービス提供会社によって若干の違いはあるようですが、基本的には、次のような流れとなるようです。
- 送信者側がサービス提供会社に契約書のファイルをアップロードし、受信者側に送信指示をする。
- 受信者側において、送られてきたURLから契約内容を確認し、署名欄に文字を入力した上で承認ボタンを押す。
- 双方に契約成立通知が発送される。
- サービス提供会社において、契約内容等をクラウド上で保存し、いつでも確認できるようにしておく。
つまり、紙の契約書で必要だった①署名、②押印、③郵送、④契約書保存等の作業が不要となるということです。
電子契約の信用性(証拠力)
では、この電子契約は、紙の契約書と比べても大丈夫なくらいの信用性(証拠力)が担保されているといえるのでしょうか。
まず、紙の契約書においても、その方法により契約の強度は異なります。
最も強力なのは実印(印鑑登録証明付き)による契約です。不動産売買契約書などで利用されます。
この実印による契約の場合、難しい話は省きますが、基本的には実印を登録した本人がその意思に基づいて契約したと推定されますので、「そんな契約に合意した覚えはない」という言い分は、非常に通りにくくなります(契約書の強度が高いといえます)。
ただし、一般的な契約書で実印(印鑑登録証明付き)を求めることは稀でしょう。認印(シャチハタ不可)で対応していることがほとんどだと思います。
認印による契約の場合、実印の場合のような推定効は働きませんが、もし契約の相手方が「そんな契約書に署名押印していない」と主張してきた場合は、筆跡等やその他の事情(当事者が契約内容を前提とした行動をしていないか等)を踏まえて契約成立を立証することになります。
現在の電子契約サービスは、難しい話は省きますが、上記の例でいうと、最も基本的なプランでは、実印による契約のような推定効は働かない形態であることが多いものの、基本的には認印による契約程度の信用性は担保している状態といえます。
電子署名法3条は、電子契約における推定効を定めているのですが、この推定効を受けようとすると、契約当事者に手間とコストがかかるので、多くのサービス提供者はこれを基本プランで採用していないようです(※もちろん、電子署名法3条の推定効を受けるサービスを提供している会社もあります。例:GMOクラウドのAgreeなど。)。
また、電子契約においてはメールアドレス単位でやりとりをするため、そのメールアドレスの持主が契約を承認したというところまでは、高い蓋然性をもって立証が可能といえます。
電子契約のメリット
あくまで現在のところ、という留保付きですが、電子契約には印紙税がかからないという巨大なメリットがあります。
契約書作成ごとに印紙を貼付しなければならなかった企業にとっては、大きなコストカットが可能となります。
日常的に請負契約を締結する必要がある建築会社などは、すでに導入しているところが多いのではないでしょうか。
電子契約のデメリット
大きなデメリットというものはなさそうですが、導入のハードルになるのはコストだと思います。
電子契約分野で最もシェアが大きい「クラウドサイン」の場合、スタンダードプランでも月額1万円の固定費がかかります(これに加え、送信件数ごとに200円がかかる)。
無料プランもあるものの、タイムスタンプが付与されないため、比較的長期間の契約管理には向きません。
仮に、契約締結コストを1件500円と仮定しても、月20件以上の契約がなければ、ペイしない計算になります。
これでは、印紙税節税のメリットのない零細事業者は導入しにくいでしょう。
定額固定費を比較的安く抑え、件数ごとに比較的大きな費用が発生するプランなどが望まれるところです。
業界的に、まだ価格競争が起きていないようなので、今後の改善に期待したいと思います(※Adobe Signは月額4000円程度で利用できるようです)。
最後に
電子契約が社会に浸透してくると、企業側に大きなメリットがなくても、顧客サービスの一環として、電子契約を取り入れざるを得ない流れになってくると思われます。
そのくらい、我々は、文字を書くことに対してストレスを感じるようになっていると思います。