本記事では、企業や個人が顧問弁護士をもつことの意味について解説します。
顧問弁護士とは
企業や個人が弁護士と顧問契約を締結した場合の弁護士側を顧問弁護士、企業・個人を顧問先と呼びます。
一般的に、顧問契約は、企業・個人側が一定の顧問料を支払うことにより、弁護士側から一定の法律相談や書類作成をしてもらえるような内容になっています。
業務上、法律的な問題を抱えることが多い企業・個人が利用する法的サービスです。
どんな業種が利用するのか
上場企業等の企業規模の大きな会社で顧問弁護士をもっていないところはほぼないと思います。
中小企業であっても、業績拡大中でMA等の法的アドバイスを受けなければならないことが多い会社等はほぼ確実に顧問弁護士がいます。
また、相談しなければならないことは滅多に起こらないが、いざというときのために弁護士と顧問契約を結んでおくという用心深い会社もあります。
企業活動をしていれば、法的紛争に巻き込まれる可能性は常にありますので、どんな業種であっても弁護士と顧問契約を結んでおくことは無駄とはいえないと思います。
顧問料の相場は?
業種や企業規模、通常求められる作業内容等によって決めるので一概にはいえませんが、顧問料は月3万円程度から5万円程度が最も多いレンジだと思います。
高い場合は月数十万円ということもありますし、逆に、月1万円以下にすることもあります。
どんなサービスが受けられるのか?
一般的には、顧問料に応じて、
- 一定時間の法律相談が無料
- 一定量の書類作成が無料
という内容になっていることが多いと思います。
例えば、月3万円の顧問料であれば、法律相談6時間分、契約書作成1通分などが相場でしょうか。
「一定時間」、「一定量」というのは月単位で考えますが、例えば月3万円の顧問料を払っているが1年間何の相談もなかった場合に、ある月に契約書3通を頼まれたからといって、通常は別料金はもらわないと思います(弁護士によっても考え方は違いますが)。
代理人としては活動する場合は、基本的に別料金になりますが、通常料金よりも割引きすることがあります。
また、一般的に弁護士は自分の携帯番号を依頼者には教えませんが、顧問先には教える人が多いと思います。
土日祝日でも法律相談の対応ができるようにするためです。
顧問弁護士最大のメリット
企業・個人が弁護士と顧問契約を結ぶ最大のメリットは、反復継続して相談ができる点です。
企業等が抱える法的問題には一定の傾向があるところ、同一の弁護士に相談を続けることにより、弁護士にノウハウが蓄積され、だんだんその業界に関する弁護士の知識・対応レベルが上がっていきます。
また、それに加えて、弁護士がその企業のことをよく知ることになるので、より実態に合わせたアドバイスが可能になります。
大企業は法務担当者が数年で入れ替わるので、どんなに気を付けていても引き継がれない暗黙知というものがありますが、長年相談している顧問弁護士がいれば、伝承漏れを防止することもできます。
企業側も、その弁護士のやり方に慣れていけば、準備しなければならない資料等がノウハウ化され、情報共有や意見交換がスムーズになります。
もちろん、顧問契約を結ばなくとも、弁護士に繰り返し相談を聞いてもらうことはできます。
しかし、弁護士目線では、顧問先=身内であり、顧問先とそれ以外では、優先順位や丁寧さがどうしても変わってきます(企業目線からいうと、そうでないとわざわざ顧問契約を締結する意味がありません)。
また、顧問契約をしておけば、その弁護士がライバル企業の相談を受けることを防止することもできます(単発相談では完全には防止できません)。
したがって、ある程度の規模があり法的問題が定期的に持ち上がるような会社の場合は、顧問契約を締結しておくことにメリットが大きいと思います。
最後に
顧問弁護士というと、企業のお抱え弁護士というイメージがあるかもしれませんが、一部の例外を除き1社の顧問先だけで食べていけるほどの顧問料は得られないので、弁護士は複数の顧問先を抱えていることが通常です。
また、企業側の指示で従順に動くような弁護士は現実にはあまりいないと思います。
むしろ、リーガル面からのリスクを指摘し、ときには活動にストップをかけるようなことを言うのが顧問弁護士の役割です。
ただ、リスクを過剰に強調するのではなく、うまいリスクヘッジのやり方を伝授し、活動の後押しをすることもあります。要はバランスです。
企業のニーズに応えるためには、かなりの修練が必要となります。