本記事では、「相続を有利に進めるためのポイント4選」について解説します。
○本記事が想定する読者
将来的に相続で揉める可能性があると考えている方。
○結論
- 1 被相続人に遺言を作成してもらう
- 2 推定相続人に遺留分の放棄をさせる
- 3 贈与の証拠を作成しておく
- 4 支出の領収書は全て保管しておく
以下、解説します。
1 被相続人に遺言を作成してもらう
相続争い際してもっとも効果的なのが、「遺言」であることは言うまでもありません。
ただし、遺言が有効になるためにはいくつかの要件がありますので、できれば専門家関与の下で作成しておくことをおすすめします。
公正証書遺言でなければいけませんか?という質問を受けることもありますが、自筆証書遺言でも構いません。
ただ、公正証書遺言のほうが後で無効にされにくいということはあります。
逆に、公正証書遺言だと、公証人から、後述の遺留分について配慮するよう加筆修正を求められることがあります。
また、公正証書遺言・自筆証書遺言のいずれを作成するにしても、被相続人がご高齢の場合、遺言書作成日に認知能力のテストをした診断書を作成しておくと、他の相続人から無効主張がやりにくくなります。
2 推定相続人に遺留分の放棄をさせる
仮に、遺言を作成してもらえたとしても、他の相続人には遺留分が残ります。
被相続人の生前に、推定相続人(※簡単に言うと、被相続人が死亡する前の法定相続人のこと)にこの遺留分を放棄させることができます。
しかし、それには、家庭裁判所の許可が必要となるため、わざわざこの手続きに応じる推定相続人は少ないと考えられます。
3 証拠書類を作成しておく
・寄与分
被相続人に対して、その「財産の維持又は増加について特別の寄与をした」といえる場合は、相続において考慮されます。
これを「寄与分」といいます(詳細な説明は省略します)。
寄与分には、「労務の提供」、「財産上の給付」等のパターンがありますが、特に「財産上の給付」の場合は、お金の動きを当事者間の確認書のようなかたちで残しておくべきです。
確認書が難しければ、少なくとも現金でのやりとりは避け、預金口座に振り込むなどして足跡が残るようにしておいて下さい。
そうすると、相続人と被相続人との間で金銭の授受があったことが立証できます。
・特別受益
被相続人から推定相続人への金銭の贈与があった場合は、「特別受益」として相続において考慮される可能性があります。
したがって、贈与を受けなかった推定相続人の立場としては、被相続人及び贈与を受けた推定相続人に対し、そのような贈与があったことが後日証明できるように書面化しておくよう要望しておくべきということになります。
現実的には難しいことも多いですが、もしそのような書面を残しておけば、被相続人と相続人との間の金銭の授受が立証でき、特別受益を主張することができます。
・注意点
これら寄与分、特別受益については、相続開始までに長い時間が経っていることが多く、相手方から否定されてしまうと立証が困難な場合が少なくありません。
例え親子のことであっても、常に書面化を意識することが大切です。
4 支出の領収書は全て保管しておく
被相続人(例えば親)が高齢となり、被相続人の財産を推定相続人(子)が管理するということがよくあります。
このとき、被相続人の面倒をみていた側からは寄与分が主張される一方で、被相続人の面倒をみていなかった側からは、被相続人の預金口座からの支出が不明瞭で、不当な支出があったのではないかと追及されることがあります。
このとき、領収書などが残っていないと、家のリフォーム代、旅行代金、外食費用など、比較的金額が大きい支出の立証ができず、預金口座を管理していた推定相続人が勝手に引き出して使ったと論難されることになります。
そのような場合に備えて、被相続人の預金口座を管理する場合は、引き出して費消した金銭について後日説明ができるよう領収書などを残し、支出管理表などの家計簿をつけておくと安心です。
なお、後見を申し立てて成年後見人に就任した場合は、家庭裁判所に対して同様の報告をすることになります。
最後に
紛争の火種が長い時間をかけて燻り続け、被相続人の死亡により噴出するのがこの相続(争続)問題です。
だからこそ、せめて事実関係だけは正確に記録し、正しい議論ができるように備えておきたいものです。